製作者の想い

大崎勲 Isao Oosaki

歩んできた伝統に上積みされる技術と心
ユーザーの声と共に成長し続ける鹿島オリヂナル

ビデオ・ダイジェスト

全国有数、突出したフロントバイザー製作者としての譲れないこだわり

製作者としての自負を聞かせてください
フロントバイザーに関しては、自分が手がけた製品ならば、まず間違いなくお客さんに満足してもらえると思います。細かい調整や、他の飾りに干渉せず、丹念な取り付けの手順を踏むのには、やはり経験に裏打ちされたさまざまなノウハウが必要なんです。それがウチにはありますからね。ウチに来てくれるお客さんには「人とは違う自分だけのトラックにしたい」という気持ちの強い方が多い。そうなると、図面の引き方から変わってくるし、製作や取り付けにも難しい部分が多く出てくるわけです。だからこそ、その都度ノウハウとして吸収できることもありますし、取り組みがいも大きいんですよね。そういう意味で、鹿島オリヂナルは、お客さんから教わること、学ぶことがいっぱいの仕事場と言えるでしょうね。
フロントバイザーの素材について教えてください

ウチのフロントバイザーは、下耳とよばれる部分に鏡面研磨というバフ目(回転傷)のない通常より高価な板を使っています。この外周部にウロコの模様付けを施すことで中央の鏡面部とのメリハリがくっきりと出る。そこが多くのお客さんから好評をいただいているポイントですね。ウロコ部と鏡面部とが互いに引き立つようにデザインやサイズを熟慮しています。また、これはフロントバイザーだけではなく全体的に言えることですが、仕入れ先にはその時点で一番良い状態の物を納入してもらっています。ですから素材が届いた時に、歪みや傷が入っているということがないので、こちらが安心して製作に専念できるというのは大きいですね。
製作段階で心がけているのは、どんな点ですか?
全て手作業なため、機械で作るようにまるっきり同じものはできません。サイズ等、要望もお客さんによって違いますから。しかし、その中でも常に満足してもらえる製品を届けるというのが、私たちの心がけですね。ですから完成しても納得のいかない場合には、当然ですがやり直します。そうしたロスを極力抑えるために、忙しい時こそチェックする回数を増やして、ミスがおきないようにと意識して取り組んでいます。すでに定年で退職された方たちが、鹿島オリヂナルの伝統として残してきた「細かい箇所こそ、しっかりと手がける」というイズムを受け継ぎ、頑張っていきたいですね。
フロントバイザーの他所にはない特性を教えてください

行灯(あんどん)付きのフロントバイザーを例にお話しましょう。バイザー内部に蛍光灯を入れるタイプでは、市販されている規格の蛍光灯ではサイズが合わないことがあります、というよりも殆ど合いません。センターから左右に1本ずつ入れていますが、大きい蛍光灯だと入らない、小さいサイズでは、とりあえず収まりはしますが、隙間が大きくなる為どうしても陰が大きくなってしまうんですね。これを解消する為に、蛍光灯をフロントバイザー用に電器メーカーへ特注しました。3cm~5cm刻みで使用するサイズに合わせて作ってもらっています。こんなことはウチしかやっていないと思います。だからウチのはキレイに光が出るんです。こだわり過ぎと言えばそうなのかもしれませんが、製作側としてはこういう部分も知ってお客さんに選んでほしいですね。
製作者として、大きなやりがいを感じる瞬間とは?
取付が完了した時に、ニコニコしているお客さんから「お、かっこよくなったなあ」と喜んでもらえるのが、やはりいちばん嬉しい。お客さんの満足、この一点に尽きます。それと、同業の方におほめの言葉をいただくのも嬉しいですね。ディーラーやショップなど取引先との会話で、他所のフロントバイザーを購入された時、取付が大変だったみたいで「やっぱりユーザーさんに、鹿島さんの製品を強く勧めておけば良かったよ、取付作業の容易さは雑誌や広告では分らないからなあ」と言われたことが何度かあります。多くの製品を比較できる立場の方の言葉だからこそ説得力がありますし、うれしいですね。ああ、自分たちのしていることは間違ってないんだな、と改めて実感できました。

周囲から愛され育まれた、二代目としての確固たる資質とポリシー

幼少の頃は、家業についてどう感じていましたか?

家で商売している父親の姿を見て子供心に「かっこいいな」と感じてましたね。当時のお客さんにも可愛がってもらっていましたから、家業に対するイメージは、いい印象しかしかなかった。でも私自身、車、トラックへの興味は、もともと薄かったんです。やっと興味を持ち始めたのは学生時代になってから。この仕事を継ぐことは決まりましたが、すぐ家業に入るのではなく他所の空気も吸ってきた方がいいだろうと社長である父が判断し、昔から懇意にしている「カーショップ オン」さんへ修行という形で入社させてもらうことになったんです。まだ、何もわからない状態だったので、かなりの迷惑をかけたと思います。最初は「工具を取ってきて」と言われても目の前にあるのに、どれのことなのか分からないぐらいでしたから。
修業先では、どんなことを学びましたか?
いずれ戻って家業を継ぐだろうからということで、一通りの勉強をさせてもらいましたね。ショップでの接客も学びましたし、茨城県内や埼玉エリアの営業もしました。もちろん製作に関する仕事もイチから教えていただいて。本当に良くしてもらったと思います。この時に特に学んだのは、いかに譲れぬ線引きをしてきっちり仕上げるか、ということ。早く作るのは慣れればできる、でも早さばかり意識しても、良質なものが製作できなければ、まるで意味がない。その気持ちは今も大事に持っています。それと、接客や営業では、お客さんを覚えることの大切さを教えてもらいました。ショップのスタッフに商品知識があるのは当たり前。そのうえで「このお客さんに今必要なのはこの商品ですよ」と、的確に役立つ提案をどれくらいできるかが大事なことなんだと教えてもらいました。まだまだ足りない所ばかりですが、この2年間の修業時代があったからこそ、今の自分がいるんだと感謝しています。
社長の教えの中で、印象深かったのはどんな言葉ですか?

家業に入ってからの12年間で、社長からのアドバイスでいちばん影響を受けたのは、「お客さんのことを想って仕事をする」ということです。目先の利益じゃなく、お客さんを考えて仕事することが信用にも繋がるし、まわりまわって結果としての利益にも結びつく。だからまずは「お客さんの喜ぶこと」をしなさいと。本当にその通りだと思いますね。ウチは地元周辺のお客さんが多いので、通りがかりのついでに「ランプが切れちゃったから」など、些細なことでも寄ってくれる方が多いんです。逆にわざわざ遠方から来てくれるお客さんもたくさんいる。これって本当にありがたいですよね。品質への信頼と併せて、社長が実践してきた姿勢の積み重ねがあってこそだと思います。
最後に、会社としての今後の展望を聞かせてください
やはり、お客さんにとってトラックは一日の大部分を共に過ごす大切な相棒。だからこそ「綺麗に飾ったトラックで仕事する」という「ハリのある日々」を知ってもらいたい。これからは年々、私よりも若いドライバーさんが増えていきます。そういう新たにユーザーになりうる方々にとっても「トラックのことなら鹿島オリヂナルに頼れば何とかなる!」と思われるような会社になりたいですね。そしてお客さんの「こういうものができないだろうか?」「こんな風にしてもらいたい」などの要望にプラスして今までにない、新たな製品を作って「こんなのどう?」って提案していきたいですね。例えば現在ハイルーフ車の増加にあわせて、筑波大学のデザイン学部の教授、生徒さんといっしょにハイルーフ車用のフロントバイザーを試作しています。これはデザインのプロの考えるデザインと、トラック用品のプロである私達の技術を合わせて、かっこいい物を作るという試みです。自動車のデザインを専門とする方達なので、風切り音の低減や空気抵抗についてもアドバイスをしてくれて、自分でも良いものができるのではと楽しみにしています。今後もこういう新たなチャレンジを続けていきたいですね。

取材日2009年1月21日